固定通信サービス大手の日本テレコムも,他の大手通信事業者と同様にまだ電力危機問題は予断を許さない状況と見る。ただし,「今回の停電は発生する日にちをある程度予測できる。しかも平日昼間の数時間だけとなる可能性が高い。突然起こる災害への対応ほどは大変ではない」(日本テレコムの梶原正範技術本部基幹ネットワーク部長:写真右)。

 首都圏では87年7月23日に,大規模な停電が発生したことがある。午後1時すぎに停電が起こり,計280万戸に影響。地域によっては最大3時間以上続いた。原因は,記録的な猛暑で電力需要が急増したこと。送電線の電圧が降下し,変電所が自動停止したのだ。日本テレコムは当時を振り返り,「突然発生した87年の大停電の時とは異なり,今回は多くの企業が節電対策をしている。当社としても,なにか大きな障害を起こしたら恥だ」(和田豊技術本部ネットワーク運営部門グローバルネットワークオペレーションセンター所長:写真左)と気を引き締める。

 日本テレコムは,今回の電力危機問題に対処するための特別措置として,二つの施策を実施。一つは,毎朝9時半をめどに会議を開き,全社的な警戒令を出すべきかどうかを決めることだ。天気予報や東京電力からの情報を見て,停電の可能性が高いと判断したら,すべての事業所に連絡。「停電時に通信施設に何かあればすぐ飛び出せるよう,人員を配置する」(梶原部長)。

 もう一つの施策は,首都圏に100カ所近くある通信施設の自家用発電機や無停電電源装置(UPS)などの電力系統の点検や,停電時に備えた訓練を,時期を早めて6月までに終えたことだ。例年なら,発電機の綿密な点検作業は6~8月を避け涼しい時期に行う。発電機を動かす際は,ヒートアップを防ぐために空調のパワーを上げる。このため,暑い夏場は空調にかかる負荷が大きくなるからだ。

 発電機は,軽油を入れる燃料タンクの容量にもよるが24時間程度動く。このため,停電が昼間の数時間に限られるなら,ある程度の日数までは対応可能だ。また,日本テレコムはもともと複数の燃料供給会社と優先契約を結んでいる。「いざとなればタンクローリーが駆けつけ,燃料は確実に補給される」(梶原部長)。