マスプロは7月23日から東京ビッグサイトで開催中の展示会「ケーブルテレビ2003」で,CATV網で100Mビット/秒超の伝送速度を実現する技術「バルク伝送システム」を公開した。既に7月10日,名古屋地区のCATV局2社とこの技術の実験を開始。2004年3月末まで続ける。

 バルク伝送システムは,CATVインターネットで利用するケーブルモデムとセンター側モデム(CMTS)を3組同時に利用することで高速化を図る技術。同社が独自開発した(写真)。下り(局からユーザー方向)最大42Mビット/秒のモデムを3組使い,それらの通信速度を一つに束ねて下り最大126Mビット/秒を実現する。

 モデムとセンター側モデムは,マスプロ製の「600+R」システムを利用することが必要。さらに,3組のモデムの通信を一つに束ねるための制御装置をユーザー側とセンター側の双方で利用する。マスプロは,ユーザー側の3組のモデムと制御装置を1台の装置にまとめた製品を開発済みである。

 600+Rシステムの利用が前提なのは,上り帯域も十分に高速化させるため。標準的なケーブルモデムは上り用通信に,雑音の多い10M~55MHzの周波数を利用する。一方,600+Rは,650M~770MHzの周波数帯を上り通信専用に利用。これで,「変調方式にもよるが,上りも30M~90Mビット/秒の通信速度が実現可能になる」(マスプロ)。現在,600+Rを導入しているCATV局は20社弱であるという。

 最近,CATVインターネットを高速化する試みが国内外で増えている。2月には,名古屋市の大手CATV局であるスターキャット・ケーブルネットワークが米ナラッド・ネットワークスの上り下り各約100Mビット/秒を実現する技術をフィールド実験した。ただし,ナラッドの技術は,CATV網上にある多数の増幅器を交換する必要がある。一方,マスプロの技術は既存のCATV網を大きく変更する必要がないのが特徴。バルクによる高速化は,ほかのケーブルモデム・ベンダーも研究に着手しており,CATVインターネット高速化の有力な選択肢になりそうだ。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)