KDDIと日本テレコムは8月,自社の直収電話ユーザーを対象に,割安で携帯電話にかけられる通話サービスに参入する。直収電話から携帯電話へのいわゆる「直収発携帯着」の通話サービスは,7月からNTTコミュニケーションズ(NTTコム)とケーブル・アンド・ワイヤレスIDC(C&W IDC),平成電電の3社が提供している。KDDIと日本テレコムともに料金を明らかにしていないが,NTTコムやC&W IDCと同じ3分60円と同水準とする見通しだ。

 直収を含めた固定発携帯着の通話は,従来は携帯電話事業者が料金を決めていた。2002年11月に総務省が,直収電話事業者側に料金を決める権限を認めた後は,NTTコムなどの固定電話事業者が相次いで直収発携帯着のサービスを始めた。ただグループ内に携帯電話事業を抱えるKDDIと日本テレコムは対応を発表しておらず,動向に注目が集まっていた。携帯電話事業者が設定する固定から携帯の通話料金は現在3分70~120円のため,直収電話サービスがグループ全体の減収を加速させかねないからだ。

 しかし「競争上,携帯への通話サービスは他社に遅れないように提供するべき」(日本テレコム),「放っておけば,他事業者にトラフィックが逃げる」(KDDI)と判断。2社ともに直収発携帯着のサービスへの参入を決断した。KDDIには,「携帯電話の通話トラフィックの5割はNTTドコモ。携帯電話事業部門の減収を恐れるより,NTTドコモから奪うトラフィックを増収要因としたい」という思惑もある。

 さらに2社ともに「IP電話発携帯着」の通話サービスにも参入する。総務省が6月に,直収電話に加えてIP電話も発信側事業者に料金設定権を認める方針を打ち出したことを受けたもの。ただし「携帯電話機に“050”で始まる着信番号が表示される以上,発信だけでなく着信も同時に可能にするべき」(KDDI)という考え方もあり,サービスの開始時期は未定という。携帯電話からIP電話への通話は,携帯電話網を改修したり,IP電話網の接続料を決定するなど,解決するべき課題がまだ残っている。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)