インターネットイニシアティブ(IIJ)は7月23日,遠隔地にあるWebサーバーからのレスポンスを高速化するサービス「IIJネットライトニング」を発表した。ターゲットは,日本と米国など遠距離で高速通信を必要とする企業。8月7日からサービスを開始する。

 新サービスは,海外から日本など,物理的に距離が離れた場所にあるWebサーバーにアクセスする際のレスポンスを高速化できる。国際的な電子調達システムや,国際的なソフト開発システムなど,世界各地から1カ所のWebサーバーにアクセスする場合などに使える。

 高速化は,米国のベンチャ企業ネットリの技術で実現する。ネットリは,Webサーバーとユーザーの近くにそれぞれ専用のサーバー設備を用意。この設備間は独自の通信プロトコルで高速伝送する。ユーザーに近い設備を「バーチャル・データ・センター」(VDC),Webサーバーに近い設備を「アプリケーション・アクセス・ポイント」(AAP)と呼ぶ。VDCは,地理的に人口が多い地域を中心に,世界13カ所に用意。AAPは日本ではIIJのデータ・センター内に設置する。

 ユーザーはアクセスするWebサーバーのドメイン名をネットリのDNS(domain name system)サーバーに登録するだけ済む。例えば,米国のユーザーが日本にあるWebサーバーにアクセスする場合,ユーザーのリクエストに対してネットリのDNSサーバーが最寄りのVDCのIPアドレスを返信する。ユーザーは最寄りのVDCまで通常のHTTP(hypertext transfer protocol)などでアクセス。このVDCと日本にあるAACの間はネットリの独自プロトコルで高速転送する。AAPからWebサーバーまでは再びHTTPで通信する。

 高速化のポイントとなる独自プロトコルは「IPベースだが,ネットリが米国で特許出願中のため詳細な情報は分からない」(IIJの近藤学・技術本部企画開発部開発課長)。IIJでの評価結果によると,「HTTPS(hypertext transfer protocol over transport layer security/ secure sockets layer)で30メガ程度のファイルをダウンロードする場合,新サービスを利用すれば通常の25分の1程度まで通信時間を短縮できた」(近藤課長)。

 同サービスでは,画像や動画などのコンテンツを蓄積したキャッシュ・サーバーにアクセスする手法と異なり,ユーザーは必ず目的のWebサーバーにアクセスする。このため,キャッシュ・サーバーでは対応できなかった動的にコンテンツを生成するWebサーバーのアクセスも高速化できる。

 料金は,WebサーバーとAAPを結ぶ帯域により異なる。1Mビット/秒の場合が月額65万円,2Mビット/秒で104万円,5Mビット/秒で143万円。ほかに,初期費用50万円がかかる。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)