「東京電力は,今回の停電は長くても数時間と言っている。この程度なら自家用発電機がオーバーヒートすることはないが,いざとなったら冷却水をタンクに入れる体制を整えてある」(NTTコミュニケーションズの本田尚規ネットワーク事業部統合ネットワーク部ファシリティサービス部門電力サービス担当課長:写真上右)--。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム:写真下)は,99年まで東西NTTと同一会社だった。このため,基本的な停電対策の仕組みは東西NTTと同じだ。電話交換機などがある主要通信施設に,自家用発電機と無停電電源装置(UPS)を設置してある。

 仕組みは同じでも,実際の対策には若干の差異が見られる。NTTコムと東西NTTでは,主要通信施設の数や停電対策に対するポリシーなどに違いがあるからだ。

 NTTコムの主要通信施設の数は,数千もの加入者交換局を保有する東西NTTと比べると非常に少ない。停電が懸念される首都圏は,主要通信施設は20カ所程度である。

 NTTコムは,電力危機問題に対処するため,通常時の停電対策とは異なる施策を二つ打ち出した。一つは,自家用発電機の始動試験を通常よりも徹底的に行うことだ。「普段は空ぶかし状態で始動試験をする。今回は,擬似的な接続状態にしたうえで,実際に発電機を2時間動かしてみた」(本田担当課長)。

 NTTグループ他社は,発電機すべての実稼働試験まではしていない。発電機を動かすと燃料を消費し,多大なコストが発生するからだ。NTTコムは具体的な金額は公表していないが,「動いて当たり前のものだが,念には念を入れて,5月から6月中旬までにすべての発電機を動かした」(本田担当課長)。

 もう一つの施策は,UPSに接続した予備バッテリーの容量をすべて点検すること。6月までに,計600組に及ぶ予備バッテリーを点検した。普段はUPSの定期点検はするものの,バッテリー容量まではチェックしない。

 NTTコムは,電話や専用線などの通信サービスだけを提供しているわけではない。ユーザーのサーバー機器などを預かり,運用や保守を代行するデータ・センター事業も手がける。停電対策に関しては,「データ・センターも通信サービスと同じレベルの高い信頼性を確保してある」(岡田達夫ネットワーク事業部企画部インフラネットワークマネジメント部門サービス企画担当課長:写真上左)。停電時に特定のサービスだけが利用できなくなることはないという。