東京電力の不祥事によって,首都圏に電気を供給する原子力発電所の大半が止まっている。電力消費の多い7~9月で,大規模な停電が起こる可能性がある。このため,加入電話や携帯電話など各種通信サービスへの影響を調べた。

 携帯電話最大手のNTTドコモは,「東京電力が提供する情報によると,停電が起こったとしても最長で2時間くらいだと推察される。この程度なら十分に対応しうる体制を整えてある」(佐藤忠司ネットワーク本部災害対策室長:写真上)と言う。

 NTTドコモの停電対策を具体的に見ていこう。

 NTTドコモの携帯電話網は,無線基地局と交換局(写真中上)で構成されている。すべての交換局は,無停電電源装置(UPS)と自家用発電機(写真中下)を備えている。電気の供給が止まると,まずUPSが稼働。約5分を過ぎると,フル稼働した発電機に切り替わる。発電機はディーゼル・エンジンを搭載しており,連続で20時間以上駆動する。燃料を補給すればさらに動き続ける。

 携帯電話網の場合,相対的に見て停電に弱いのは,交換局よりも無線基地局の方である。「無線基地局は数が多いので,すべての設備に発電機を置くことができない」(佐藤室長)からだ。無線基地局は,内蔵の予備バッテリーで停電に対処する。

 基地局の予備バッテリーは,「いろいろな種類があり,10時間持つものもある。最低でも3時間くらいは電力を供給できるバッテリーが大半を占める」(佐藤室長)。つまり,停電が3時間以内におさまれば,携帯電話サービスは通常通り提供され続ける。

 また,NTTドコモは無線基地局や発電機を装備した車両を数十台保有する(写真下)。今回の停電は首都圏全域で一斉に発生するのではなく,ある程度地域が絞られる見通し。停電の発生範囲は明らかではないが,こうした特殊車両の存在は心強い。

 今回の停電問題では,別の課題も浮上した。停電が起こるとしたら暑い日であるため,ビルの屋上などに設置した無線基地局がオーバーヒートしかねないことだ。基地局の空調設備には通常予備バッテリーがないからである。

 そこでNTTドコモは7月10日から,業務用の送風機と小型発電機をレンタル。停電発生後,即座に重要な拠点にセッティングできる体制を整えた。