NECは7月10日,地上波ディジタル放送を受信できる携帯電話機を試作し,同放送を受信するデモを公開した(写真)。試作機はNTTドコモの第3世代携帯電話サービスのFOMA端末「N2051」を基に開発。アンテナとUHFチューナ,地上波ディジタル放送の変調方式であるOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)の復調LSIチップを搭載する。デモでは,OFDMで変調された電波を受信し,試作機で動画を再生する様子を披露した。試作機は動画を1時間強,連続で再生できる。

 一般のテレビ向けの地上波ディジタル放送は2003年12月に始まるが,携帯電話機向け放送の開始時期は未定。NECでは「2005年には携帯電話機向けの放送が始まることを希望している」(田村義晴モバイルターミナル事業部長)とし,「今回,技術的には基本的なモノ(携帯電話機)ができると示した。早く商品化に結び付けたい」(同)と意気込む。

 地上波ディジタル放送を携帯電話機で受信できるようになると,いわゆる“通信と放送の融合”が進む。例えば,地上波ディジタル放送のテレビ・ショッピングの番組を見ながら,携帯電話機のインターネット接続機能を使ってその番組のWebサイトに接続し,Webブラウザ経由で欲しい商品を注文したり,決済することが可能となる。

 なお,携帯電話機向け地上波ディジタル放送の動画の符号化方式は未定。今回のデモでは動画をMPEG-4 Visual Simple Profile方式で,音声をMPEG-2 AAC LC Profile方式で符号化し,この二つのデータを伝送フォーマットであるMPEG-2 Transport Stream方式で一つにまとめた。動画の解像度はSQVGA(160ドット×120ドットまたは160ドット×90ドット)で,毎秒15コマの再生が可能。NECによれば,「将来的にはQVGA(320ドット×240ドットの解像度)で毎秒15コマの再生ができるだろう」(加藤明モバイルサービス開発研究部・部長)としている。

(武部 健一=日経コミュニケーション)