KDDIなど新電電系の電話会社5社は,総務省が4月に認可した2003~2004年度のNTT電話接続料の取り消しを求めて,片山虎之助総務大臣を相手取った行政訴訟を17日に起こす。5社の主張は,平均で4.8%値上げされた電話接続料が認可までに不透明な行政手続きや電気通信事業法の違反行為があったことで,5社が不利益を受けたというもの。通信事業者が総務大臣を相手取った訴訟を起こすのは極めて異例。訴訟の行方次第では,総務省の通信政策にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

 訴訟を起こすのはKDDIのほか,日本テレコムとパワードコム,ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC,フュージョン・コミュニケーションズ--である。7月10日に5社の社長が集まり,最終意思を確認する。その上で17日に各社が別個に東京地方裁判所に提訴するが,途中で訴訟が一本化される公算もある。

 5社が争点にするのは,(1)接続料の認可時に,総務省が利害関係者への意見募集を実施しなかったのは,自ら定めた「接続ルール」に違反する,(2)利害関係者の意見を聞かずに認可した接続料を4月11日にさかのぼって適用したことで,不当に電話会社各社の利益を損なった,(3)電話トラフィックが増減した場合に,トラフィックの実績値から差額を精算する「事後精算」方式は,電気通信事業法で認められていない--などの点である。

 (1)や(2)のように5社が認可手続きの不備を主な争点にするのは,行政事件訴訟法では「接続料の認可」といった行政行為自体しか訴訟の対象にできないため。ただし5社はこうした争点を突破口として,3月28日に総務省が決めた省令改正自体の妥当性も法廷で争いたい考えだ。この省令では接続料値上げの根拠となる計算方法を定めたり,NTT東西で接続料を均一にするといった東西NTTの利益になる制度が盛り込まれている。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)