総務省の「料金設定の在り方に関する研究会」は6月17日,固定電話から携帯電話にかけた場合の料金設定権に関する最終報告書をまとめて公表した。5月下旬に公表した当初案通り,NTT東西地域会社の加入電話から携帯電話への通話に,「中継事業者」を導入して,固定発携帯着の通話に競争原理を導入すべきとした。

 固定発携帯着の通話は,これまで着側の携帯電話事業者が通話料金を決めており,通話料の高止まりの原因とされていた。今回の措置によりNTT電話のユーザーは,通話料金などを比較して携帯電話への呼を中継する事業者を選べるようになる。事業者の選択は「00XY」という識別番号を携帯電話番号の頭につけて行う。事業者識別番号がない呼は,従来どおり携帯電話事業者が料金を設定・収受する。

 ただし報告書では,携帯電話事業者の収益への影響が大きいことから,一定期間の激変緩和措置を設けるべきとした。具体的には,中継事業者と携帯電話事業者がそれぞれの通話区間について料金を設定し,合計金額をユーザーに請求する「ぶつ切り料金」制を期間限定で認める。本来,中継事業者が中継した呼では,携帯電話事業者の収入は携帯電話網の接続料だけになるが,これに一定の利潤を加えた料金をユーザーに請求できることになる。

 ただし以上の措置は,NTT電話発の場合。ブロードバンド回線を使ったIP電話から携帯電話にかけた場合は,東西NTT以外の直加入電話と同じく,当初から発側の事業者が料金を設定できる。このため,最初から中継事業者より安価なユーザー料金が設定でき,IP電話普及の追い風になりそうだ。

 総務省は,6月中にも激変緩和措置の適用期間を決める。その上で今後,事業者間で協議がまとまらなかった場合の「裁定の指針」として,今回の制度を運用する予定だ。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)