情報通信技術委員会(TTC)は6月12日,DSL(digital subscriber line)の技術要件などを検討する「DSL専門委員会」を東京・浜松町で開催した。

 4月22日に総務省の「DSL作業班」での議論が終了し,ADSLのスペクトル管理についての議論の場が,8カ月ぶりにTTCに戻ってきた。スペクトル管理は,電話用銅線ケーブルを束ねた太束回線に異種のDSL方式を同居させるためのルールのことである。

 今回開催した会合の主な目的は二つ。一つは,スペクトル管理を議論する体制の確立である。DSL専門委員会の下にスペクトル管理のサブワーキング・グループ(SWG)を設置することを決定。SWGのリーダーとして,元アッカ・ネットワークス副社長の池田佳和氏を内定した。同氏は5月に東京工業大学の教授に就任しており,学識経験者の中立な立場として選出された。

 もう一つは,下り最大伝送速度20Mビット/秒超の,いわゆる「24メガADSL」の導入に関して,スペクトル管理などの技術的要件の検討すること。ただ議論が紛糾し,結論は出なかった。総務省が設置したDSL作業班での,12メガADSLに関する「クラス分け」の結論に対して異議を唱える声が出てきたからだ。

 DSL作業班では,12メガADSLの干渉問題を議論したが,4月の最終合意で結論がまとまりそうになかった。そのため,NTT東日本,アッカ,イー・アクセス,ソフトバンクBB,長野県協同電算のADSL事業者5社が非公式に集まって,クラス分けに合意したという経緯がある。

 これに対して,「5社以外のメーカーなどから,合意の内容が明らかでないなどの異論が出てきた」(ある参加者)。「12メガADSLのオーバーラップ方式のクラス分けに技術的な説明がないため干渉度合いの計算が難しく,24メガADSLサービスに乗り出せない」と言う。

 24メガADSLサービスに関しては,これ以外にも,アマチュア無線の電波との干渉問題もある。DSL作業班の結果を受けて,総務省が6月上旬まで募集したパブリック・コメントでは,アマチュア無線の利用者が電波との干渉問題に関する懸念の声を多数寄せている。

 24メガADSLは12メガADSLに比べて伝送帯域を広げたため,アマチュア無線の一部帯域と干渉する恐れがある。これに関して,ITU-Tでは24メガADSLで,干渉する帯域を使わない仕様を定めている。メーカーもこの仕様をADSLモデムに実装した。

 日本アマチュア無線連盟は「技術的にみて24メガADSLは電力線搬送のような問題は起きないと認識している。ただしサービス発表や開始前に,干渉度合いを確認する実験をお願いしたい」(技術研究所の森章和所長)と理解を示すが,きちんとした実験の実施が前提だ。

 12メガADSLでもそうであったように,24メガADSLはサービス開始までハードルが多そうだ。DSL専門委員会の次回会合は7月3日。少なくともそれまでは,24メガADSLがサービス開始となることはないだろう。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)

【おわびと訂正】
記事掲載当初,終わりから2段落目で「(技術研究所の近藤章和所長)」としましたが,正しくは「(技術研究所の森章和所長)」でした。おわびして訂正します。