「DSL(digital subscriber line)サービスはこれからも,提供地域の拡大や通信速度の改善を続ける。ただ流れは変わった。今後は,光アクセス・サービスの本格提供に向け,ネットワークに再投資する」(米ベライゾン・コミュニケーションズ ネットワーク・サービシズ・グループのポール・A・ラクーチャー社長)--。

 米アトランタで開催中の通信業界の国際展示会「SUPERCOMM」(会期:6月1日~5日)は,2日目を迎えた。米ベル系地域電話会社(RBOC)の幹部が集まったパネル・セッションで,各社が光アクセス・サービス「FTTP」を本格展開する方針を表明した。

 FTTPはfiber to the premises(敷地内,構内)の略で,一般家庭や集合住宅のほか,SOHO(small office, home office)を含めた法人向けのサービスを,同じ光アクセス網のアーキテクチャで提供するサービス。日本の「FTTH(fiber to the home)」に相当する。

 各社がFTTPサービスで採用するのが,電話局からの1心の光ファイバを複数の世帯,拠点で共有するPON(passive optical network)アーキテクチャだ。セッションでは,SBCコミュニケーションズのロス・K・アイルランド上級執行副社長兼CTO(最高技術責任者)は,「家庭向けは最大32世帯,法人向けは同12拠点で1心を共有する」と,PONの1方式で同社が採用するBPON(broadband PON)の構成を説明した(写真)。

 ベライゾンもPONを採用。SOHOなどの集まるビルでは,ビル内に置いたONT(optical network terminal)で各テナントにイーサネットや電話線を分岐させる網構成を取ることを表明した。回線速度は,下りが最大622Mビット/秒,上りが同155Mビット/秒となる。通信に加えて,テレビ放送を配信するための光信号も多重する。このような網構成で,電話やインターネット接続に加えて,ビデオ・チャットなどの付加サービス,多チャンネルやビデオ・オンデマンド,HDTV(高精細度テレビ)サービスを提供できる基盤を整える。

 このほか,米USウエストを買収した米クエスト・コミュニケーションズや米ベルサウスも,DSLサービスの拡充に加えてFTTPサービスに参入する意向を表明。ベルサウスは,FTTPサービスでの活用を視野に,MPLS(multi protocols lavel switching)を使ったIPボーンを構築している。同社のビル・スミス最高製品開発・技術責任者は,「FTTPが我々の最終目標」と語った。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)