JR西日本は5月29日,沿線の一部に無線LAN機器を多数設置し,高速で走る列車と通信する「沿線無線WAN」の実証試験に成功したと発表した。トンネル内部でも車外と2M~3Mビット/秒の通信環境を維持できることから,列車でのブロードバンド通信環境の実現に一歩近づいたと言えそうだ。

 JR西日本は,兵庫県の尼崎駅と新三田線を結ぶ宝塚線で今回の実験を実施した。トンネル7.7kmを含む総延長38kmの区間の沿線に86局の基地局を設置。列車側にも無線LAN機器を設置して,車内の通信端末と車外のJR西日本のIPネットワークとを接続した。沿線上の無線基地局の間隔は平均で430mとなる。

 伝送実験では,車内の通信端末と大阪市にあるJR西日本の本社と2M~3Mビット/秒の高速通信を実現。IP電話を使って,「普通の電話の感覚で通話できる」(JR西日本)ことも確認した。

 さらに,サブネットを越えて基地局を自動的につなぎ換えられる「モバイルIP」も検証。時速130kmで走る列車でも通信を継続できることを確認した。

 JR西日本は今回の実験を踏まえて,(1)駅や車内の乗客への情報提供,(2)乗客の細かなニーズに応える情報サービス,(3)安全性が高く,より正確な列車の運行と異常発生時からの素早い復旧,(4)事故原因の特定の迅速化と的確な処理――などの実現を目指すとしている。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)