米半導体メーカーのセンティリアム・コミュニケーションズは5月28日,最大24Mや50Mビット/秒などの高速ADSL(asymmetric digital subscriber line)技術に対応したチップセットを販売すると発表した。機器メーカーなどにサンプル出荷を始めており,今後量産出荷する予定。

 チップセットの名称は「Maximus」。通信事業者の局に設置してADSL回線を多重するDSLAM(DSL access multiplexer)に組み込むチップである。対応するADSL技術は,1.5メガの「G.992.2」,8メガ/12メガの「G.992.1」,安定性を高めた8メガ/12メガの「G.992.3」など。さらに,国内向けの24メガADSL技術「G.992.1 Annex I」や,現状では欧米向けの24メガADSL技術「G.992.5」にも対応する。

 50Mビット/秒の速度は,センティリアムがITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)に提案している独自技術で実現する。変調に利用する周波数帯域を12メガADSLの4倍近くまで広げるなどして,下りを最大50Mビット/秒に高速化。上りは,周波数帯域を12メガADSLの2倍に広げて最大3Mビット/秒を実現する。

 周波数帯域を変更する独自方式は,他回線に与える干渉を検証するスペクトル管理での議論が必要。このため通信事業者は,すぐに最大50Mビット/秒のサービスを提供することはできない。

 もっとも,センティリアムの24メガADSL向けDSLAM用チップは,今回発表したMaximusのみ。「通信事業者が,24メガADSLサービス用にMaximusを搭載したDSLAMを導入すれば,将来的に同じDSLAMで下り最大50Mビット/秒や上り最大3Mビット/秒のサービスを提供できる。設備投資の負荷が軽い」(センティリアム)。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)