参院本会議は5月23日,個人情報保護関連5法案を可決した。(1)基本法則と民間の個人情報保護を定めた個人情報の保護に関する法,(2)行政機関の保有する個人情報の保護に関する法,(3)独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する法,(4)情報公開・個人情報保護審査会設置法,(5)行政機関の保有する個人情報保護法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法――の五つ。

 5法案の成立で,住民基本台帳ネットワークで取り扱われる個人情報の保護が強化されたことになる。約3分の2の市町村が個人情報保護条例を制定しているが,行政区域外で住民の個人情報を守るには全国をカバーする個人情報保護法が不可欠だった。

 行政が取り扱う個人情報保護法には,88年に成立した「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」がある。これは個人情報の取り扱いに制限を設けていたが,データベースなど体系化された電子情報に限定している。新法では,この適応範囲をメモ書きなど体系化されていない情報や,紙などの非電子媒体に拡大した。個人情報を公務員などが不正に利用,収集した場合は罰則が課せられる。

 国民は,データベース化された情報の利用目的や記録項目などをインターネットから参照し,開示を請求できる。内容に不備があれば,訂正や利用停止も請求できる。行政が開示などを拒否した場合でも,第三者機関である情報公開・個人情報保護審査会に不服を申し立てられる。

 個人情報関連5法案は2001年3月に国会に提出されたが,報道・表現の自由が十分ではないという観点から2002年12月には一度廃案になった。審議には,2003年4~5月の衆参・特別委員会の質疑時間でも80時間以上,通算では100時間以上に及んでいた。