無線機器メーカーのルートは5月13日,高速移動中でも途切れない2.4GHz帯無線LAN(IEEE802.11b準拠)を用いた高速移動体IP通信システムの実証実験に成功したと発表した。

 今回の実験は,日本自動車研究所の高速周回路で実施。自動車・オートバイに今回開発した無線LANモジュールとカメラ,PDAを装着し,サーキットの周回上には1.2km間隔で基地局を設置。基地局を介して,無線LANモジュールからの画像伝送実験を行った。基地局間をスムーズにハンドオーバー(基地局の切り替え)することで,時速260kmの高速移動中でも通信が途切れなかった。

 今回利用したのは「二波同時受信」という技術。無線LANモジュールを2つ内蔵した機器を取り付けて,それぞれ別々の基地局の電波を受信する。片方の無線LANモジュールで電波を受信できなくなっても,もう片方の無線LANモジュールが別の基地局からの電波を受信しているため通信できる仕組みだ。

 この実験は,ルート,東京工業大学,九州システム情報技術研究所,京都高度技術研究所,通信総合研究所,システム開発会社のスプライトの6社が共同で実施した。今後も製品化を進めて,早ければ今夏にも基地局などを含めたシステムとして発売する。無線LANモジュール単体での販売はしない。新幹線からのIP通信,サーキットの車内からのカメラ中継,高速移動する救急車と病院をIPビデオ電話で結ぶ遠隔医療などの用途を想定している。

 今後は,「周波数開放の問題などが解決したら,IEEE802.11aに準拠している5GHz帯無線LANでの高速移動体IP通信システムの開発も行っていきたい」(ルート)としている。

(白井 良=日経コミュニケーション)