KDDIの小野寺正社長は5月8日の決算発表の席上で,10月にもFTTH(fiber to the home)回線を使う映像配信サービスに参入することを明らかにした。インターネット接続サービス,IP電話,映像配信をパッケージ化して,月1万円以下の料金で提供する。

 提供するのは,CS放送や映画などのビデオ・オン・デマンドのサービス。ユーザー宅に設置したセットトップボックスにデータを配信して,テレビで見られるようにする。当初は主に,大都市の集合住宅向けにサービスを提供する。その後全国に対象を広げて,2007年度までに300万世帯の加入と売り上げ2500億円を目指す。

 こうした映像配信向け設備構築に,KDDIは2007年度までに1200億円を投資する。ユーザー宅を結ぶ光ファイバ回線には,東西NTT局の光ファイバ設備を借りる計画だ。NTT局とKDDIのセンターを結ぶ光ファイバ網や,KDDIの携帯電話用基地局を結ぶ光ファイバ回線は現在構築中。基地局に近い集合住宅には,自社で光ファイバを敷設する場合もあるという。

 小野寺社長は,「2002年春に実施したFTTH実験では,映像配信にそれなりのニーズがあると見た」と自信を見せる。ただし,「映像配信サービスが加入者獲得にどれだけの効果があるかは見えていない。それよりも,映像配信,IP電話,インターネット接続のパッケージで割安感を出し,魅力があるサービスにしたい。ただし,2003年度のFTTHサービスはまだ準備段階で,ADSLサービスの方が中心」と,すぐにサービスが立ち上がるとは考えていないことを示した。

 なお,KDDIの2002年度決算は,前年比で減収増益となった。営業収益は,前年比485億円減となる2兆7853億円。経常利益は,344億円増の1132億円。2003年度については,営業収益が2兆7800億円,経常利益は1950億円の減収増益を見込んでいる。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)