ソフトバンクBBは4月18日,ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)に提出したコメントを取り下げる方針と表明した。同社は2月末,日本向けADSL(asymmetric digital subscriber line)やFTTH(fiber to the home)技術の標準化に反対する意見書を提出。当初は5月にも各技術を勧告化できる予定だったが,ソフトバンクBBの意見によって10月以降に遅れる可能性が出ていた。

 ソフトバンクBBが反対していたのは,(1)日本向けADSLの改訂版「G.992.1 Annex C Amendment 1」,(2)VDSL回線とISDN回線を多重する「G.993.1 Annex F」,(3)最大2.5Gビット/秒の「GPON」(gigabit passive optical network)--の三つである。

 いずれも,1月に開催したITU-TのSG(study group)15会合で合意(コンセント)に達した技術。2月からITU-Tが,標準化期間を前倒しするための手順「AAP」(alternative approval process)に従ってスペル間違いなどを訂正するための意見募集。ソフトバンクBBは,この募集に対して勧告化に反対する意見を出していた。

 ところが4月18日に開いた総務省のITU-T部会の場で,他社の批判を受けたソフトバンクBBは態度を転換。反対意見の取り下げを表明した。各社の批判内容は,例えば「ソフトバンクBBのコメントは単なる反対だけで代替え案がなく,勧告化が遅れてしまうだけ。意見を出すなら,合意前の標準化作業で言うべき」(NTT),「最後の意見募集で反対するような行為が続けば,勧告化を早めようとしたAAPプロセスを失うことにもなりかねない」(イー・アクセス)と手厳しいものだった。

 これに対してソフトバンクBBの筒井多圭志取締役CTOは,「積極的に標準化に参加するため意見を出した。激しい競争の中でサービスを提供しており,何でも賛成とは言えない」と反論。ただし,「勧告化を遅らせる目的はない。皆さんの指摘はもっともで,早急にコメントを取り下げる方針」(筒井CTO)と説明。同社が反対意見を取り下げれば,5月にも各技術は正式に勧告化される見通しである。