ADSL(asymmetric digital subscriber line)などの干渉問題について議論している総務省のDSL作業班は4月14日,第9回目の会合を開催した。4月22日に開催する次回の最終会合に向けて,ADSL事業者など参加各社が歩み寄りを見せた。

 合意したのは,回線同士の干渉を計算するための回線モデルの概要や,長距離向け技術の扱いなど。既存の回線モデルでは,絶縁体に紙を使ったケーブルを想定し,干渉源となる24回線が取り囲んだ状態で影響を計算している。

 これに対してソフトバンクBBなどは,「現実的にはあり得ない厳しいモデル。紙絶縁はほとんどないはずだし,同一カッド内の1回線からのノイズだけを考慮すべき」と反対していた。一方,NTT東日本などは,「紙絶縁も残っている。同一カッドからのノイズが支配的で,24回線取り囲んだ前提でも厳し過ぎない」と反論していた。ところが今回の会合では,絶縁体はポリエチレンとし,取り囲む干渉源の回線数を1~5回線などに減らすことで合意した。

 さらに,NTT局から遠いユーザー向けのADSL技術について,当面は条件を緩和する方針。他回線に与える干渉が大きい技術でも,NTT局から遠い場合は太束ケーブル内の収容制限などを免除することになる。収容制限が付いたサービスの場合はユーザーが支払う月額料金が月899円値上げとなるため,緩和策が実現すれば効果が大きい。

 このため,ソフトバンクBBが12メガADSLサービス「Yahoo! BB 12M」で使う技術に制限が付かない可能性が高まった。どの技術に制限が付くかは,今後民間標準化団体の情報通信技術委員会(TTC)で検討することになる。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)