ADSL(asymmetric digital subscriber line)の干渉問題について議論している総務省のDSL作業班は3月31日,8回目の会合を開催した。今回は,NTT東日本,ソフトバンクBB,アッカ・ネットワークスがフィールドでの干渉実験結果を提出した。イー・アクセスは結果の提出を見送った。

 実験は,NTT東日本の成城交換センターから2.7km,3.0km離れた2点で実施した。3社の実験結果はおおむね一致している。(1)ISDNは「G.992.1 Annex A」および「G.992.1 Annex C」の上り下りともに干渉する,(2)ソフトバンクBBの採用するAnnex Aのオーバーラップ方式は,Annex AとAnnex Cの上り速度に干渉する--というものだ。

 (2)はサービス提供事業者によって解釈が異なる。Annex Aのオーバーラップ方式とISDNの干渉を比較した場合,ISDNの干渉の方が大きい。これに対して,「Annex Aのオーバーラップ方式の干渉はユーザーに影響を及ぼさない程度」とするソフトバンクBBと,「干渉しているので考慮すべき」とするNTT東日本の意見は食い違っている。一方,アッカ・ネットワークスは「1点だけのデータでは定性評価しかできない。より長距離での結果がないと判断できない」とした。

 そもそも干渉の有無ではなく,何をもって干渉と判断するか,その判断方法を検討するのが本来のDSL作業班の目的。事業者間での合意が必要だが,そう簡単には進みそうもない。DSL作業班は,4月22日の第10回会合で終了予定であり,次回には総務省の事務局から報告書の骨子が出される見込みだ。今回の会合で,既存のサービスのユーザー保護の考え方などで多少の合意は見られたものの,最終的にDSL作業班として干渉問題にかたを付けるのは難しそうだ。

(山根 小雪=日経コミュニケーション)