米センティリアム・コミュニケーションズは3月24日,新型のADSL(asymmetric digital subscriber line)技術「eXtremeDSL MAX」を発表した。最大伝送速度を上り下りとも向上することと,ADSLサービスが提供可能なNTT局舎からの距離を向上できることが特徴。伝送速度は,局舎からユーザー宅(下り)方向で最大50Mビット/秒,ユーザー宅から局舎(上り)方向で最大3Mビット/秒。また,局舎からの距離が最大7kmまで離れていても下り192kビット/秒とISDN以上の伝送速度を確保するという。

 eXtremeDSL MAXは,(1)上りの伝送に約4倍の周波数を使うQuad Spectrum(MAX-QS),(2)上りの伝送に約2倍の周波数を使うDouble Spectrum(MAX-DS),(3)上りの伝送に使える周波数を拡大するExtended Upstream(MAX-EU),(4)DMT(discrete multitone)の1搬送波に乗せるビット数を増やすHigh Bit Loading(MAX-HBL),(5)ノイズ環境下で局舎から離れていてもISDN以上の伝送速度を確保するLong Reach(MAX-LR)――の5種類の機能で成り立つ。これらの機能を1チップに乗せ,ADSLサービス事業者が選択して使えるようにする。

 新技術を使えば,ADSLサービスの最大伝送速度だけでなくスループットの向上が期待できる。「MAX-QSを使えば,局舎からの距離が1.3kmまではMAX-DSより高速なADSLサービスを提供できる。またMAX-DSでも,局舎から2.4kmまでは既存の12メガADSLサービスより速い」(センティリアム・ジャパンの郷右近一彦プロダクト・プランニングディレクター)。

 ただし現状,MAX-LRとMAX-DS以外の機能はセンティリアムの独自技術。MAX-QSやMAX-HBLは,センティリアムが1月のITU-T会合で提案するも否決された。10月に開催予定の次期会合で,再度提案する計画である。また今回,発表したのは技術のみで,チップの開発はこれからの段階。この技術を使った日本でのサービス商用化の時期は未定だが,「2003年度上期にも,ユーザーへ提供するようになると考えている」(センティリアム・ジャパンの高橋秀公社長)と言う。