ソフトバンクBBがITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)に提出したコメントを巡って,関係者の間に波紋が起こっている。

 同社は,1月末のITU-T会合で合意したADSL(asymmetric digital subscriber line)やFTTH(fiber to the home)などの標準仕様案に反対意見を表明した。国内向けADSL技術やFTTH技術は早ければ4月にも勧告化される予定だったが,次回の会合が開催される10月以降に標準化が遅れる可能性が出てきた。

 ソフトバンクBBが反対意見を提出したのは,(1)国内向けの12メガADSL技術「G.992.1 Annex C」の改訂版,(2)VDSL(very high bit rate DSL)技術「G.993.1」のAnnex F,(3)FTTH向けで最大2.5Gビット/秒のPON(passive optical network)技術「G.984.2」--である。(1)は東西NTT,イー・アクセス,アッカ・ネットワークスなどが12メガADSLサービスで活用中の技術。(2)はVDSL回線上に周波数を分けて,東西NTTのISDN回線を多重できる技術。(3)は,1心の光ファイバを複数ユーザーで共用するPON方式のうち,次世代の高速FTTH技術である。

 ソフトバンクBBは,(1)に関しては「北米向けの「Annex A」方式で十分利用できており,Annex Cの改訂版は必要ない」,(2)については,「ADSL回線に干渉を与えるISDN回線が残ることになるので支持できない」,(3)のPON技術については,「他事業者への光ファイバ開放が難しくなる」--といった理由で反対している。

 あるITU-T参加者は,「1月の会合で各社が合意済みの内容であり,通常は標準案に若干修正を加える程度で終わる。ところが,今さら技術仕様そのものに反対というコメントを出すのはルール違反。自社が使わない技術は,標準化を遅らせているのではないか」と問題視している。

 ソフトバンクBBは1月にスイスのジュネーブで開催したITU-Tの会合でも,ADSLの改訂版技術などに反対していた。ところがソフトバンクBBは,この会合に参加してADSLの標準化反対などを表明したが,実施した投票に出席しなかったため合意が成立していた。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)