「総務省は電話接続料の新制度導入を1年間は見送り,議論を尽くすべきだ」(東京大学大学院の醍醐聰教授)--。3月4日,都内で学識者や消費者団体,通信事業者の幹部などが集まり,電話の接続料などをテーマにしたシンポジウム「情報通信の現在と未来--世界の動向と日本の進路--」を開催。メインテーマは,総務省が2月14日に公表したNTT東西地域会社の電話接続料の値上げである。

 総務省案では,東西NTTと他の通信事業との電話接続料を,ZC(中継局交換局)接続で12%,平均でも5%値上げする予定。シンポジウムでは主催者の一人である醍醐教授のように,「1年間は接続料を現行のまま凍結し,その間に情報通信審議会での議論を軽んじた総務省の制度案を見直すべき」(甲南大学の佐藤冶正教授)という意見が相次いだ。消費者団体からは「消費者は特定の事業者を優遇する総務省の情報通信政策にへきえきしている」(加藤真代・主婦連合会参与)という痛烈な総務省批判も飛び出した。

 このほか,消費者団体が通信事業者に接続料値上げの影響を聞く一幕もあった。ZC接続を利用してIP電話を提供しているフュージョン・コミュニケーションズの角田忠久社長は,「5%ならば絶対にユーザー料金を値上げしないと断言できる。しかし10%を超えると,体力が弱い当社は料金に転嫁せざるを得ない」と説明。一方,ソフトバンクの孫正義社長は「料金については悩んでいるが,仮に料金に転嫁すれば国内電話料金は3分8.1円になる。一方,日米間の通話料金は7.5円のまま。つまり国際,国内通話の料金が逆転する」と,料金設定に矛盾が出る可能性を示唆した。

 また,総務省の新制度案が,東西NTTの接続料が均一になるように「内部補填(ほてん)」を認めることを盛り込んだ点にも反対意見が続出。日本消費者連盟が「ガス,水道などの公共料金や,介護保険料さえ地域格差がある」という会員の声を紹介した。そもそもこの制度は,国会が「電話料金は東西で均一であるべき」と決議したことがきっかけ。これに対し,国会の立場を代弁した島聡・衆議院議員は「消費者の声は理解した。だが,政党政治の世界でもNTTはガリバーのような存在」と,“難しい判断”を迫られていたことを漏らした。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)