ADSL(asymmetric digital subscriber line)などの干渉問題について議論している総務省のDSL作業班は2月21日,5回目の会合を開催した。ソフトバンクBB,NTT東日本,イー・アクセスなどのADSL事業者や,通信機器メーカーなどが参加した。3月末の第8回会合で結論をまとめる計画だが,いまだ意見のすれ違いが続いている。

 DSL作業班では,ADSL回線などが他回線に及ぼす影響度を事前にシミュレーションする基本手法などを検討している。焦点の一つは,ADSL事業者が提供中の12メガADSL技術。特に,ソフトバンクBBの「Yahoo! BB 12M」は,他のADSL回線の上り(ユーザー宅からNTT局方向)の速度に悪影響を及ぼす恐れがあると指摘を受けていた。

 そこで,ソフトバンクBBは自社の約81万のADSLサービスについて,下りが2Mビット/秒以上と高速で,上りが200kビット/秒以下と低速だった563回線を調査。このうち,「同一カッド」と呼ぶ太束ケーブルの近い位置に,xDSL回線があったのは22回線だけだった。

 今回の会合では,イー・アクセスも同様に約37万回線についての調査結果を発表した。下りが2Mビット/秒以上で上りが200kビット/秒以下の回線は107回線。このうち,同一カッド内にxDSL回線があったのは14回線である。この結果を受けてソフトバンクBBの孫正義社長は,「200kビット/秒以下と上りが遅い回線のうち,ADSL回線が近くにあったのはほんの一部。上り速度が低下する原因は,ADSLでないことが証明できた。干渉があると大騒ぎしたが,結局問題はなかった」と主張した。

 これに対してNTT東日本,イー・アクセス,住友電気工業などが反論。NTT東日本は,「上りが200kビット/秒以上なら,問題ないというわけではない。600kビット/秒出ていたユーザーが,200kビット/秒に低下したら問題ではないか」と指摘。住友電工は,「下りが2Mビット/秒以上出ている回線は,NTT局から近いケースで上りへの悪影響が出にくい。定量的な干渉度合いを見た上で,技術の効果を照らし合わせて判断すべきだ」と主張。結局両者の意見は,まとまらなかった。次回の第6回会合は,3月7日に開催する計画である。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)