2003年4月以降,IP電話を含む電話会社が料金値上げを迫られる事態が現実味を帯びてきた。総務省が2月14日,NTT東西地域会社の電話接続料に「事後精算方式」を導入する案を,情報通信審議会に諮問したためだ。

 事後精算方式とは,接続料の算定に使ったNTT電話網の暫定トラフィック量が現実とかい離した場合に,差額を後で精算する方式。固定電話のトラフィック減が続く現状では,NTT電話網を利用する他事業者は,多額の追加負担を迫られる公算がある。

 総務省が諮問した接続料の案は,2003~2004年度の適用分。2001年下期~2002年度上期のトラフィック量を使い暫定的に算定しており,接続料はGC(加入者交換局)接続で3分4.37円(2002年度は4.5円),ZC(中継交換局)接続で3分5.36円(同4.78円)となる。これだけでも,新興事業者が多く利用するZC接続は12%の値上げ。

 さらに,2003年度と2004年度のトラフィック量がそれぞれ確定した段階で,算定に用いた基準値から15%以上の増減があった場合は,事後精算を実施する。例えば,トラフィックが減った場合は,NTT電話網を使う他事業者から東西NTTへの追加支払いが発生。ただ精算は,確定トラフィック量から算出した接続料から「従来の接続料/0.95」を差し引いた金額として,接続料の差額全額よりも安くする。

 携帯電話やブロードバンドの普及を背景に,電話トラフィックは2000年度をピークに減少。2000年度実績を100%とした時の減少幅は2001年度が9%,2002年度が17%で推移している。このトレンドが続けば,1年半前の数値で算定する2003年度から15%を超えるかい離が発生し,精算が生じる公算がある。いずれにせよNTTに接続する電話各社は,「将来の電話トラフィックがどう推移するか」というギャンブル的要素を加味しながら,電話料金を決めざるを得ない。

 ただ,諮問を受けた情通審の電気通信事業部会では,総務省の諮問案に疑問を呈する声もある。情通審は関係者からのヒアリングなどを踏まえ,3月末にもこの案を認めるかどうかの結論を出す。
(玄 忠雄=日経コミュニケーション)