1月31日に開かれたADSL(asymmetric digital subscriber line)などの干渉問題について議論している総務省のDSL作業班の第3回会合で,半導体メーカーの米グローブスパンビラータ(GSV)が,干渉の度合いをシミュレーションする新手法を提案した。これまでシミュレーションによる事前規制に反対してきたソフトバンクBBの孫正義社長は,「実環境を考慮した手法」と評価した。

 GSVが提案したのは,NTT東西地域会社の電話線の状況を細かく考慮する方式。東西NTTの電話線では,複数の太さの銅線をつなぎ合わるケースや,複数の分岐ケーブル「ブリッジ・タップ」があることが多い。さらに,絶縁体に紙とプラスチックの2種類がある。GSVの提案は,こうした複数のケースを組み合わせて干渉を計算する。

 これに対し,民間標準化団体の情報通信技術委員会(TTC)が制定した干渉を防ぐためのルール「JJ-100.01」は,簡略化したモデルを基にシミュレーションする。具体的には,一定の太さで絶縁体が紙のケーブルで,ブリッジ・タップがないモデルを想定する。このモデルで計算すると,ソフトバンクBBの12メガADSL技術が他回線に干渉するシミュレーション結果が出る恐れがあった。このためソフトバンクBBの孫社長は,「JJ-100.01の非現実的なモデルで,新サービスを規制されるのは納得できない」と主張していた。

 孫社長は今回の会合で,「GSVの提案に反対するなら,科学的に意見を出すべきだ」と強調した。ただし,GSV案が採用されるかどうかは,今後の議論次第。次回以降のDSL作業班で,各社がGSV案に対する意見や新提案などが出される見込みである。