総務省は12月25日,電波周波数の割り当て手続きの見直しに関する研究会の最終報告を発表した。実現されれば,無線LANや無線アクセス,携帯電話など新しい無線通信サービスのための帯域拡大が,今までより容易になる。2004年に電波法を改正し,同報告の内容を実現する姿勢だ。参入事業者の選定基準の一つに事業者による電波の金銭的な価値評価を盛り込むなど,これまでの周波数行政を大きく変更するものになった。

 総務省総合通信基盤局は,2002年1月から「電波有効利用政策研究会」を開催。その中で,あまり利用されていない周波数帯の電波を新しい無線通信サービスに再配分する場合の制度の見直しについて議論を進めてきた。今回発表した最終報告書による見直しの骨子は,(1)これまで10年以上を保証していた既存の電波利用者の“立ち退き”期間を3年程度に短縮,(2)新規利用者の選定には,“立ち退き料”の負担額の大きさなども考慮する――の2点。

 現在,電波の利用はひっ迫しており,ほとんどの周波数帯が何らかの形で割り当てが終わっている。このため新しい無線通信サービスを始めるには,既存の電波利用者と共存を図るか,または立ち退きを迫るかしなくてはならない。今までは総務省が立ち退きを決めた場合でも,既存利用者に10年以上の立ち退き期間が設けられていた。だが,これでは新しい無線通信サービスの迅速な実現は困難なため,同報告書はこの期間を3年程度と大幅に短縮するとしている。

 その一方で新規利用者者は,立ち退かせる既存利用者に支払う立ち退き料を最低5割負担することが義務となる。複数の事業者が割り当てで競合している場合,残りの5割についても負担を求め,その負担額の多少を選定基準の一つとして採用する。立ち退き料は,利用者が立ち退く時点でのインフラの残存簿価,つまり未償却分に基づいて総務省が定める。いわば,“上限額の決まった周波数オークション制”と言える。

 周波数オークションによる市場原理の導入には,電波利用者の交代を促進する効果がある半面,マイナス面もある。携帯電話の電波割り当てなどにオークション制を採用した欧米では,落札額が天井知らずで高騰したことが大きな問題になった。総務省は,「上限額が決まっているため,従来型のオークションの弊害は起こらない」(電波政策課)としている。