2003~2004年度に適用される加入電話の接続料金は,大幅な値上げが回避されそうだ。総務省が10月に設置した「予測トラフィック研究会」で,「同年度の通話トラフィックを精緻に予測することは困難。接続料は過去のトラフィック実績値を用いるべき」との結論に達したことが明らかになったため。接続料金が小幅の値上げに留まれば,電話各社は2003年度以降も電話料金を現状のままに留める公算が高い。

 電話接続料は,NTT東西地域会社が他の電話会社から徴収している加入電話網の使用料のこと。2002年度までは一貫して値下がりしており,電話各社の料金競争を促してきた。しかし,ブロードバンドや携帯電話の普及などで,加入電話の通話トラフィックは2000年度をピークに大幅に減少。接続料は「電話網のコストをトラフィックで割る」という算出方法を用いるため,改訂年度である2003年度から,大幅に値上げされかねない事態に直面していた。

 しかし,2003~2004年度のトラフィック予測を担当した総務省の研究会は,「景気低迷や携帯電話の影響からトラフィックは従来通り減り続ける」,「ペースを落としながら,減り続ける」,「景気回復や電話料値下げなどでトラフィックは増加に転じる」という3種類のシナリオで予測値を算出したものの,シナリオを1本化できず「精緻な予測は今後の課題」と結論。代わりに,接続料の算定には,2001年度下期と2002年度上期のトラフィック実績値を用いるべきと報告する模様だ。このため実際の接続料は,2002年度から若干の値上げに留まる公算が高い。

 ただし,接続料の大幅値上げが回避されても,電話会社にとっては懸念材料は残っている。2003~2004年度の通話トラフィックが確定した段階で接続料を計算し直し,差額を後で清算する手法が導入される可能性もあるからだ。東西NTT以外の電話各社は,「サービスに必要なコスト(接続料)が将来に変わるようでは,事業が成り立たない」(ある大手通信事業者)と事後の精算方式の導入に反対している。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)