総務省でADSL(asymmetric digital subscriber line)技術の干渉問題について基本ルールを作成する「DSL作業班」は,12月16日に第1回会合を開催した。ADSL事業者,ネットワーク機器メーカー,半導体メーカー,大学関係者などが参加した。3時間以上にわたり,各社が熱い議論を繰り広げた。

 DSL作業班は,総務省の情報通信審議会が12月11日に答申として設置を要望したもの。干渉を抑制するスペクトル管理標準を作成していた情報通信技術委員会(TTC)では,ADSLサービス「Yahoo! BB」を提供するBBテクノロジーの反対で作業が中止。総務省の部会で基本ルール作成に乗り出した。第1回会合では,2月上旬までにルール案をまとめて4月までに答申を作成するというスケジュールを決定した。ただし,今回の会合でも議論は紛糾。ルールがまとまるには,時間がかかりそうだ。

 第1回会合では,BBテクノロジーの孫正義社長は何度も繰り返して異議を唱えた。まず,事務局の総務省に対して参加メンバーの人選を批判。「今回の参加者は,(日本向け技術の)Annex C対応機器を販売するメーカーや通信事業者ばかりで,非常に偏った人選だ。総務省は,少数派の意見がアンフェアな扱いを受けるというTTCの間違いを繰り返すのか」(孫社長)と猛反発した。

 さらに,富士通,住友電気工業,沖電気工業がスペクトル管理の経緯や現状を説明したところ,孫社長は毎回詳細にわたって問題点を指摘した。そのうえで,「Annex C機器メーカーばかりが説明の機会を与えられるのは不当。日本はWTO(世界貿易機関)加盟国なのに,総務省が不当にAnnex C対応の日本製品を優先させるのは問題だ」と強調した。

 一方,事務局を務める総務省総合通信基盤局電気通信技術システム課は,「人選は,BBテクノロジーにも推薦者を出してもらって決めた。参加者に要望があれば,意見を出して欲しい。今回はADSL事業者以外の企業に頼んで経緯を説明してもらっただけ。反対意見があれば,2回会合以降に発言してもらえればよい」と反論した。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)