総務省の電気通信事業紛争処理委員会は11月5日,総務大臣が判断を求めた「固定発携帯着」通話の料金設定権について,「固定発携帯着」の料金設定権の一部を固定電話事業者側に認める答申を下した。

 紛争処理委員会が固定事業者に料金設定権を認めたのは,NTT以外の事業者が,回線を直接ユーザー宅まで引き込む「直加入電話」からNTTドコモ着の通話。委員会はそれ以外の,通常の固定発携帯着通話の料金設定権については判断を示さなかった。しかし,「現状の料金は,合理性の説明がなく不透明」と厳しく指摘。総務大臣に「合理的で透明性のある料金設定の仕組み」の整備を求めた。

 問題の発端は7月18日,固定電話事業者である平成電電が総務大臣に対し,携帯電話事業者との接続協定の裁定を申請したこと。これを受けて総務大臣は9月20日,紛争処理員会に「固定発携帯着の料金設定権を現状通りとすべき」という判断を示して諮問した。しかし紛争処理委員会は,諮問を否定した形で答申。今後,総務大臣は電気通信事業法に基づき,紛争処理委員会の答申を受けて裁定を下す。一部ながら,総務大臣が携帯電話事業者の現状の料金設定権を否定する裁定を下すことは確実になった。

 現在,日本国内の固定発携帯着の電話料金は,着信側の携帯電話事業者が設定。3分80円~120円の料金を課金している。そこで固定電話事業者である平成電電は,料金設定権を得て割安(3分60円)な固定発携帯着電話サービスを提供することを計画。携帯電話事業者との協議が不調に終わったとして7月18日,総務大臣に接続協定裁定を求めていた。

 紛争処理員会は「直加入電話発NTTドコモ着」の通話について,「市場支配的事業者であるNTTドコモは,契約約款で公開する接続条件に基づいて他事業者の接続請求に応じなければならない」(紛争処理委員会)とした。

 なお,NTT東西地域会社の加入電話からの発信を中継する直加入電話以外の接続については,「平成電電とNTTドコモを含む携帯電話事業者との間で協議が尽くされていない」として判断を保留。裁定せずに,まずは当事者間の接続協議に委ねるのが適当と答申。また,平成電電の直加入電話からNTTドコモ以外への通話に関しては,平成電電が裁定を請求しなったとして,判断を示さなかった。

 日経コミュニケーションの取材に対し平成電電は,「当社がサービス提供中の加入電話発携帯着について当社の主張が認められたとは言えず,満足はしていない。直加入電話サービスは,提供時期の前倒しを検討する」とコメントした。