ソフトバンクの孫正義社長は10月30日,子会社のBBテクノロジーが8月に商用サービスを始めた12メガのADSL(asymmetric digital subscriber line)サービス加入者が,約20万件に達したことを明らかにした。さらに,「20万件のうち,干渉問題でのクレームはまだ1件も受けていない」と言明。ISDNやADSLの異なる通信方式間の干渉問題を巡ってつばぜり合いが続く中,同社の主張の正当性を強調した。

 孫社長は同時に,ADSLサービス「Yahoo! BB」全体で9月の新規加入者が12万5000,10月は9月以上の数の加入者を獲得したと説明。「8メガから12メガへの乗り換えユーザーも増えており,12メガの加入者は約20万件になった」と現状を明らかにした。

 その上で孫社長は干渉問題について,「20万人が使って1件もクレームがないなら,仮に100万人使ってもクレームは多くて数件止まりだろう。干渉があるとする一部の議論は,特殊な条件を設定した机上の空論であることが確実になった」と主張。「1件もクレームはない」というフレーズを繰り返して,同社が採用した通信方式であるAnnex.A.exの正当性を訴えた。

 ADSLの通信方式を巡る議論は,日本でADSLサービスが始まった99年から続いている。ADSLの通信方式は大きく分けて,米国,韓国などで使われているITU-T G.992.1 Annex.A方式と,日本向け仕様として策定された同Annex.C方式がある。12メガ版ADSLでも,Annex.Aの拡張版である「Annex.A.ex」を採用したBBテクノロジーと,Annex.Cの拡張版を採用したその他のADSLサービス事業者との間で,両方式間の干渉問題や標準化を巡る議論が起こっている。8月には,民間標準化団体の情報通信技術委員会(TTC)を巻き込んだ訴訟問題にまで発展した。