総務省は9月30日,短距離向けの高速無線通信技術「UWB」(ultra wideband)の技術的条件について,情報通信審議会に諮問した。1年をかけて,既存の無線システムとの共用条件を探る。諮問通りにUWB向け周波数が開放されれば,10m離れた相手と最大100Mビット/秒で通信できるようになる。情報家電間でのビデオ映像の高速伝送も可能になる。
UWBは,1960年代から米国で軍事用のレーダー技術として開発が進められた無線技術。10億分の1秒という非常に細かいパルス信号を発射して,反射してきたパルスの位置を知ることで調査対象の情報を取得する。通信への応用も可能で,非常に広い範囲の周波数帯域を使う一方で,電波の電力密度を低く押さえたまま超高速通信を実現できる。2002年2月に米国連邦通信委員会(FCC)が,一定の条件で民生利用を解禁した。
総務省の今回の諮問は,このFCCの動きを受けてのもの。3.1G~10.6GHz帯の無線周波数をUWBで利用する場合に,既存の無線システムとの共用条件を調べるのが目的である。共用条件に厳しい制限が付かなければ,通信距離10m程度で最大通信速度100Mビット/秒の実現も可能だ。
UWBの特徴である(1)低消費電力,(2)10m程度のポイント・ツー・ポイント通信に向く――という点は,短距離無線通信技術のBluetoothと共通しており,主な適用範囲も同じである。ただし,通信速度はUWBのほうが10倍以上も速いため,開放されれば既存のBluetoothを追い越して普及が進む可能性もある。
しかし今回,共用条件を検討する既存の無線システムには,非常に高い測定精度を必要とする各種レーダー技術や放送用システム,2010年以降に始まる予定の第4世代移動通信システム,5GHz帯無線LAN,通信事業者の中継回線など重要な用途が目白押し。総務省は,「今回の検討はあくまで,技術的に共用が可能かどうかを見るもの。検討結果次第では,開放が困難という結論になることもあり得る」(移動通信課)という。米国と同様な条件でUWBが利用できるようになるとは限らないようだ。