ソフトバンク・グループは8月30日,記者会見を開いて情報通信技術委員会(TTC)が8月29日にADSL(asymmetric digital subscriber line)の干渉について議論した会合の結果を説明した。ソフトバンクの孫正義社長は,「我々の主張が理解されたと認識している。当社の12メガADSLサービスのユーザーは安心して使ってほしい」と強調した。しかし,孫社長の認識と他のTTC参加メンバーの認識とは大きく食い違い,問題が解決したとは言い難い状況だ。

 TTCでは,ADSL回線など電話線を使う技術が干渉するのを抑制するため,周波数分布や信号強度を規定するスペクトル管理標準を作成している。ソフトバンク・グループが12メガADSLで採用する新技術「Annex A.ex」は他回線に干渉する恐れがあるとして,7月から議論を進めていた。

 これに対してソフトバンク・グループは8月19日,TTCのスペクトル管理の標準化体制などに問題があるとして文書で動議を提出。この結果,8月29日のTTC会合では,(1)改訂版スペクトル管理標準のドラフト(草案)を取り下げ,全技術について見直すことになった,(2)中立公正な標準化の場の設立に向けて検討するという方向性が出た--と孫社長は説明した。

 しかし,29日のTTCのスペクトル管理委員会に参加していた他のメンバーの認識は異なる。あるメンバーは,「ドラフトを取り下げたのは事実だが,白紙になったわけではない。今後も引き続き検討していく」と説明。他のメンバーも,「29日の委員会では,新しい標準化の場についてソフトバンクの説明を聞いただけで,議論はしていない。新しい場が必要なのかを検討する方針だが,必ずしも必要と決まったわけではない」と言う。両者の認識には大きなズレがあり,解決までにはまだ時間がかかりそうだ。