NTT持ち株会社の和田紀夫社長は8月28日の記者会見で,固定電話から携帯電話へ発信する場合の料金設定権が携帯電話事業者側にある現状について,「現状通り携帯電話事業者が料金を決めるのが合理的だ」と発言。現状を支持する考えを明らかにした(写真)。

 和田社長はその理由を,「通話料金の設定権は,ネットワークや通信設備の主力がどちらにあるかが基準となる。携帯電話への着信は,携帯電話端末が基地局間を移動するなど,位置確認がコアとなる技術。この設備やネットワークは,携帯電話事業者が保持している」と指摘。さらに,「料金設定権を固定電話へ移すとなると,課金システムの大幅な変更が必要になり事業者のコスト負担が大きい。あえて変更しなくてもよいのではないか」との考えを示した。

 通常,電話料金の設定権は発信側にある。しかし固定発携帯着の料金は,携帯電話事業者側で設定するのが「慣習」として残っている。携帯電話事業者にとっては,固定電話からかけた場合の通話料が高くても,加入者当たりの通話が減る可能性は小さい。また,事業者間での競争原理が働かないため,料金が高止まりしている。この点について和田社長は「NTTドコモは,ほかの通信事業者と比べて固定発料金は安い」と擁護した。

 固定発携帯着の料金設定権に関しては,7月に平成電電が総務大臣へ裁定を申し出ている。また9月上旬に同社は,公正取引委員会にも独占法禁止違反として携帯電話事業者を申告する予定。平成電電は固定発携帯着の通話を割安で提供するために料金設定権を得たい考えだが,慣行通り料金決定権を維持しようとする携帯電話事業者4グループとの間で交渉が決裂している。8月6日には,市内通話サービスを展開するケーブル・アンド・ワイヤレスIDCが,同様の内容でNTTドコモの料金設定権に関する接続約款を変更するよう総務省に要請している。