国内の標準化団体であるTTC(情報通信技術委員会)は7月31日,電話線を使う通信技術の干渉について協議する「スペクトル管理標準」の会合を開催した。ソフトバンク・グループのBBテクノロジーが8月1日に開始する予定となっていた(7月31日延期を発表)12メガADSL(asymmetric digital subscriber line)サービス「Yahoo! BB 12M」が他回線に及ぼす干渉について議論した。ただし,BBテクノロジーが会合に欠席したため,結論は先送りされた。

 問題となっているのは,Yahoo! BB 12Mで採用する「Annex A.ex」と呼ぶ技術。7月12日にイー・アクセスの小畑至弘CTOが「他の回線に大きな影響を及ぼす恐れがある」と懸念を表明した。これにソフトバンクの孫正義社長が7月16日,「問題はないはず。イー・アクセスの発言は営業妨害だ」と反論していた。

 会合ではNECと住友電気工業が,Annex A.exが他の回線に及ぼす干渉のシミュレーション値を提出した。内容は,「他回線に大きな悪影響がある。導入するなら,既存サービスとの同一カッドを避けたうえで,NTT局から2km以内に限定して使う必要がある」(参加者)というもの。カッドとは2回線を束ねた電話ケーブルの単位のこと。同一カッドを避けるという制限が付けば,ADSLやISDNなどの回線と同じカッドには収容できない。加えて距離制限が付いてしまえば,サービス提供には大きな障害となる。

 もっとも,制限が付くと決まったわけではない。「Annex A.ex方式と,計算の基準にしている方式が完全に一致しているか分からない。BBテクノロジーが欠席したので,議論を進められない」と関係者は漏らす。干渉問題は,長期化が避けられないようだ。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)