NTT持ち株会社の和田紀夫社長は7月29日の定例記者会見で,電話網が混雑してつながりにくくなる「ふくそう」状態について,NTT東西地域会社に文書で注意を促したことを明らかにした。和田社長は,「ネットワークを故意に傷つけたり,他ユーザーに迷惑をかける利用に対して,必要な対策をしていきたい」と表明した(写真)

 大阪府では7月に入ってから15日,29日の2回,加入電話がきわめてつながりにくくなる「ふくそう」状態に陥った。携帯電話端末に電話をかけて1度だけ呼び出し音を鳴らして切る“ワン切り”と呼ばれる行為が大量に行われ,電話交換機の負荷が急増したことが原因だ。

 和田社長は,「以前は災害などで,一定地域に着信が集まるのが一般的だった。今回の問題は発信が集中したうえ,人ではなく機械からの発信。これまでは想定できなかった」と特異性を強調した。

ワン切り業者への対策として和田社長は,「大量発生する発信に合わせて,ネットワークを増強する考えはない。他ユーザーに迷惑がかかれば,何らかのガードをかけるといった新しい対策が必要」と発言。ただし,「電話の発信者には,当然発信する権利がある。強制的に規制するというより,他ユーザーに迷惑がかからないことを重視していく」(和田社長)と,慎重に対策を練っていることを示唆した。

 このほか,電力会社グループの通信事業者であるパワードコムと,インターネットイニシアティブ(IIJ)グループが統合に向けて詳細を協議していることについては,「秋に向けて詳細を詰めていると聞いている。内容が分からないのでコメントする状況にない」と述べるにとどまった。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)