イー・アクセスの小畑至弘CTOは7月12日,報道関係者向けの勉強会で,BBテクノロジーが8月に開始するADSL(asymmetric digital subscriber line)サービス「Yahoo! BB 12M」について,総務省に書面で苦情を出したことを明らかにした。問題にしているのは,BBテクノロジーが採用する「Annex A.ex」と呼ぶ新方式である。

 Annex A.exとは,半導体メーカーの米グローブスパンビラータが開発したADSL技術。北米向けのADSL標準「G.992.1 Annex A」をベースにしている。通常は上り専用の26k~138kHzの周波数帯域を下り通信にも使って,高速化やNTT局から遠いユーザーの収容を実現する。ただし,上りの周波数帯で下り信号を送ると,他のADSL回線の上り信号に影響を及ぼす恐れがある。アッカ・ネットワークスが採用する「C.X」方式もAnnnex A.exと同様に下り信号と上り信号を重ね合わせるが,小畑CTOは「影響はAnnex A.exの方が大きく,C.Xの3倍近くなるかもしれない」と警戒する。

 小畑CTOが最も問題にしているのは,BBテクノロジーがAnnex A.exをサービス開始直前の7月10日まで国内標準化団体である情報通信技術委員会(TTC)に提案しなかったことや,TTCで議論を始める前にフィールドで利用していたこと。小畑CTOはTTCのスペクトル標準を検討する委員会のリーダーを務めており,「複数の技術が干渉して速度が低下するのを回避するため,ADSL事業者が一緒にスペクトル管理のルールを作っている。BBテクノロジーの行動は問題だ」と強調した。

 今後TTCでは,BBテクノロジー,NEC,住友電気工業の3社がそれぞれ算出する,Annex A.exが他回線に及ぼす影響を基に,議論を進めていく予定である。