NECインフロンティアは6月17日,VoIP(voice over IP)対応の中小規模事業所向けPBX(構内電話交換機)「Aspire」を発表した。既存のボタン電話やPBXを,VoIPで音声/データ統合したいユーザー向けに提供していく。販売・出荷開始は8月2日。併せて同社は,今後の製品強化の方針も明らかにした。

 Aspireは,VoIPゲートウェイ機能を持つ小型PBX。VoIP呼制御プロトコルはH.323バージョン3を利用する。本体内部には,LANケーブルを使ってIP電話機に給電できるスイッチング・ハブや,Web,アプリケーションなどサーバー機能を持つ専用ボードも搭載できる。価格は,ISDN6回線,Web表示機能などを持つ多機能IP電話機32台を組み合わせた構成で約350万円。

 今後,NECインフロンティアは,Aspireを無線LANと連携できるように機能強化していく。特に無線LANを使ったVoIPの音声通話システムの開発に力を入れていく方針。まずは,VoIP対応の電話機能を搭載したWindows CE端末「PocketGear」を,企業向け仕様として今年の秋ごろにも出荷する。2003年夏ごろには,ローミング機能の標準仕様IEEE802.11dとQoSの標準仕様IEEE802.11eに対応した無線LAN型のIP電話機を発表する。

 さらに,時期は未定だが,無線LANアクセス・サービスなど公衆網経由で社内電話網にアクセスするシステムも発表する計画。同社は,公衆網経由で高品質な音声通話を実現するには,IP電話機やPBX側だけでなくネットワークの各所でQoS(quarty of service)を制御する仕組みが必要と見ている。これに対応した技術はすでに開発済み。特許を取得でき次第,製品化を発表する考え。

 NECインフロンティアは,主に中小規模事業所向けにボタン電話や小型PBXを開発・販売するNECグループの1社。NECが2001年6月1日にボタン電話およびPOS端末事業部を分離分割し,グループ企業の日通工と統合して設立された。現在,ボタン電話分野における同社の市場シェアは,国内,北米ともに第3位。今後はVoIPや無線LAN技術と連携した製品を投入し,2004年には世界シェア第2位を目指す。すでに,大手通信事業者の無線LANアクセス・サービス向けに機器を納入した実績を持つ。
(加藤 慶信=日経コミュニケーション)