日本テレコムは5月28日,2001年度(2002年3月期)決算を発表した。グループ連結決算では,売上高は前期比16.3%増の1兆7040億3900万円,経常利益は前期比17.3%減の740億3000万円。純利益は前期の175億4600万円の黒字から659億6900万円の赤字に転落した。1996年に一部上場して以来,初めての赤字決算である。

 事業別に見ると,日本テレコム(単体)の業績悪化が目立つ。同社の売上高は前期比4.2%減の4574億4300万円。経常利益は144億9800万円の赤字に転落した。当期純利益も645億4400万円の赤字だった。業績悪化の理由は,主に固定電話事業の落ち込み。音声伝送収入は前期比15.6%減の2061億5200万円で,さらにマイライン関連経費が257億円とかさみ,収益を圧迫した。一方,データ関連収入は企業向けのIP-VPNサービス「SOLTERIA」などが好調で,前期比55.4%増の444億5300万円に拡大した。

 同社は法人向け事業など「コア事業」へ経営資源を集中させるとともに,経費削減やリストラなどで,「収益を出せるような会社へと生まれ変わる」(ウィリアム・モロー社長,写真左)と宣言。当期損失は,有価証券の評価損,マイラインのキャンペーン費用など一時的な要素によるものと説明し,事業改革は順調に進んでいると強調した。

 不採算事業の売却も進めている。決算発表と同時に,ADSL(asymmetric digital subscriber line)回線事業をグループ会社のイー・アクセスに営業譲渡すると発表した。一方で,日本テレコムの固定通信事業を東京電力に売却するという報道に対しては,「固定通信事業は将来性がある。売却するという結論は出していない」(モロー社長)と,明確なコメントを避けた。

 携帯電話事業を手掛けるJ-フォンは,「売り上げは増加し,解約率や加入者獲得コストは減少。経営面で良い状況が続いている」(ダリル・グリーン社長,写真右)との言葉通り,売上高は前期比22%増の1兆3510億円,経常利益は同34%増の973億円と好調を維持した。ただし,旧式の携帯電話端末の除却費用などで592億円の特別損失を計上した。純利益については非公表。

 グリーン社長は第3世代携帯電話(3G)サービスの戦略についても言及。同社は3Gサービスを2002年12月に開始するが,「3GこそJ-フォンが勝負できる土俵。見て触って,必ず欲しくなるようなサービスにする」と意気込みを語った。さらに,サービス開始から9カ月後の2003年8月には,3Gのサービス・エリアを現行の第2世代(2G)携帯電話サービスと同水準にし,早急なエリア展開で2Gから3Gへのシフトを促す考えだ。

 また日本テレコムは,事業構造改革の一環として,8月上旬に持ち株会社へと移行することを明らかにした。日本テレコムは名称変更により持ち株会社の「日本テレコム・ホールディングス」となる。さらに,事業部門ごとに三つの子会社に事業を分割する。具体的には,固定通信事業が「日本テレコム」に,移動体通信販売代理店事業が「テレコム・エクスプレス」に,移動体通信の料金請求などの関連サービス事業は「ジャパン・システム・ソリューション」--となる。

(川崎 慎介=日経コミュニケーション)