総務省は,2003年の次期通常国会で電気通信事業法の抜本改正に乗り出す方針を固めた。通信設備を自ら保有しているかを基準にした第一種/第二種の電気通信事業者の区分を廃止し,通信事業への参入は原則として届出制に移行する。

 総務省はその上で,東西NTTの電話サービスのような基本サービスや競争が進んでいないサービスを除いては,事業者がユーザーごとに提供料金を取り決める「相対(あいたい)契約」を容認。サービスに対する規制を大幅に緩和する。新制度に移行すれば,事業者が示す通信料金は参考に過ぎず,企業ユーザーにとっては価格交渉力が要求されることにもなりそうだ。

 事業法の抜本見直し案は,情報通信審議会(総務相の諮問機関)に設置された特別部会が6月4日に答申案を公表する。部会案では,非競争的分野などを除き,新しい通信サービスや料金の事前届出制を廃止。NTTコミュニケーションズなどNTTグループ企業の提供サービスも,競争が働いている品目は規制緩和の対象になる模様だ。ただし,総務省が通信料金の動向を把握するため,一定期間ごとの料金の事後届け出などを検討している。不当な廉価料金に対する料金変更命令などの措置を取るべきとの意見も出ている。

 通信の事業区分撤廃に伴い,道路や電柱などの占有で優遇を受けられる「公益事業特権」は希望する事業者だけに付与する。現在は,すべての第一種電気通信事業者に与えている。部会案では,特権の付与先を限定する代わりに,希望するユーザーに対するサービス提供義務や,他事業者との相互接続義務などを課す方針だ。

 部会案が打ち出す制度改革は基本的に規制緩和が柱になっているが,利用者保護のために一部の規制強化も検討されている模様。現在,インターネット接続事業者(プロバイダ)など,第二種電気通信事業者の事業撤退には規制がない。これに対して部会では,通信事業者に撤退の際の利用者移行策を届け出させるなど,利用者保護策を制度面で担保したい考えのようだ。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)