ADSL(asymmetric digital subscriber line)事業者のアッカ・ネットワークスは4月9日,2002年内にも最大速度が8Mビット/秒を超えるADSL接続サービスを提供する方針を明らかにした。

 ITU-T勧告のADSL規格「G.992.1」の日本向け仕様である「Annex C」を,ADSL用チップ・ベンダーの米グローブスパンビラータが開発した独自技術で拡張する。アッカはこの技術方式を電信電話技術委員会(TTC)に提案中で,TTCの標準化完了を前提に,「2002年末までにサービスを提供したい」(坂田好男社長)としている。

 ただ,アッカの狙いは最大速度の向上というよりも,むしろNTT電話局から通信距離が長いユーザーの速度改善。「4.9km以内であれば,現行方式よりも500kビット/秒以上は通信速度が向上する。さらに6.9kmでも最低200kビット/秒の速度は確保できる」(アッカ)としている。

 ソフトバンク・グループが提供する「Yahoo! BB」では,遠距離やISDN干渉下でも500kビット/秒程度の通信速度を確保できる米パラダインの独自技術「ReachDSL」を使って,速度が出にくいユーザーを救済している。アッカは,これに対抗するため,グローブスパンビラータに拡張方式の開発を依頼していた。

 またアッカは,4月中に19億円の第三者割当増資を実施することも明らかにした。3月15日に実施した,NTTコミュニケーションズや三井物産などに対する116億円強の割当増資に続くもので,4月の増資で資本金を200億円弱とする。

 今後の経営方針としては,ADSLサービスで25~30%のシェアを目標にするほか,企業向けではSLA(サービス品質保証制度)の導入を検討するなどサービス・メニューを拡充する。加入者が好調に伸びているADSLサービスは,3月末時点で36万2000回線を提供中。アッカのシェアは約15%である。アッカは,およそ100万回線の提供で損益分岐点に達するとしている。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)