日本アマチュア無線連盟(JARL)は,2002年1月末に電波産業会(ARIB)と共同で実施した電力線通信の漏えい電波を調べる実験の概要と結果の一部を公表した。結果は「電力線通信はアマチュア無線に影響あり」を示唆するものになっている。JARLは4月3日に結果に対する総合的な評価を決める方針。評価によっては,数十メガの高速通信を実現する電力線通信の規制緩和の行方を左右しそうだ。

 JARLが今回公表したのは,1月26日と27日に群馬県の「電力中央研究所 赤城試験センター」でARIBと共同で実施した電力線通信の漏えい電波を調べる実験の測定方法と実験結果の一部。約54メートルの電線の両端に電力線モデムを接続し,電線から3メートル離れた位置で漏えい電波を測定するという方法を採用した。具体的な測定は,(1)アマチュア無線など既存の通信機器の測定限界への影響をアマチュア無線愛好家の聴覚で調べる,(2)スペクトル・アナライザを使って,環境中の雑音と電力線通信の漏えい電波をそれぞれ測定し比較する――という二種類の方法で実施した。

 公表された一部の実験結果は,電力線通信の漏えい電波によって測定限界が高くなったことを示唆している。また,スペクトル・アナライザの測定値も,漏えい電波が環境中のノイズよりも10~15dB強いという結果になった。「影響があるかないか」という問いについては,明らかに「ある」という結果になったと言える。ただ,影響の程度の評価については,意見が分かれる可能性がある。

 JARLは,結果の評価について現段階では触れていないが,4月3日に電磁環境委員会を開いて実験結果を総括する予定。総務省はJARLとARIBがそれぞれ報告する実験の評価を踏まえて,短波帯の周波数を使う電力線通信の規制緩和について態度を決める姿勢だ。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)