NTTアクセスサービスシステム研究所およびNTT情報流通基盤総合研究所は,5GHz帯の電波を使う無線LANの標準規格IEEE802.11aに準拠するチップ・セットを開発した。3月27日~30日の4日間,早稲田大学で開かれる電子情報通信学会で発表する。


 製品化の計画もすでにある。NTTコミュニケーションズが,4月開始予定の無線LANを使ったホットスポット(公衆アクセス)サービス・システムに導入する計画だ。


 NTT研究所が今回開発したのは,IEEE802.11a規格に準拠し最大36Mビット/秒を実現する無線LANのICチップ・セット。PCMCIAのインタフェース部分からCPU,MAC(媒体アクセス制御),そしてベースバンド変調までの機能を約18mm角の1チップにまとめた。「CPUとベースバンド変調まで1チップにしたのは世界で初めて」(NTT研)だという。また,チップ・セットの次のバージョンでは,「今回サポートしなかったオプションの伝送速度である48M,54Mビット/秒にも対応する」(NTT研)。


 NTTコミュニケーションズはNTT研のチップ・セットを,ホットスポット・サービスで使う無線LANの独自製品に採用する方針。4月のサービス開始には製品化は間に合わないものの,基地局をIEEE802.11bだけでなくIEEE802.11aのPCカードも使えるようにしておくことで,いつでもIEEE802.11aに対応できるようにする。


 両NTT研究所は,IEEE802.11aのベースバンド変調方式「OFDM」(直交周波数多重)を米ルーセント・テクノロジーズと共にIEEE802.11委員会に提案した経緯がある。しかし,チップ・セットの開発と実用化では,米国のベンチャーであるアセロス・コミュニケーションズに先を越されてしまっていた。


(野沢 哲生=日経コミュニケーション)