住友電気工業は3月12日,世界最高速の電力線モデムを東京電力と共同で開発したと発表した。最大伝送速度は上り(ユーザー宅から局舎方向)18Mビット/秒,下り27Mビット/秒。これまで実用化された電力線モデムは,米インテロンや米エニキアが開発した最大14Mビット/秒の製品が最速だった。

 新型電力線モデムは,スペインのICメーカーであるDS2のチップを採用。変調方式に直交周波数分割多重(OFDM:orthogonal frequency division multiplexing)を使い,独自技術で多数の搬送波を重ね合わせることに成功した。スペインの電力会社エンデサが,このモデムを使って2月初旬からスペインのサラゴサ市で実証実験を始めている。同実験で,上り・下りの合計で最大45Mビット/秒,平均して約20Mビット/秒のスループットを計測した。

 ただし,現時点で日本国内では使えない。電力線通信で使える周波数が,電波法により10k~450kHzの間に限られているからだ。短波ラジオなど他の無線通信や放送に影響を及ぼす恐れがあるためである。新型モデムは約2.5M~23MHzの短波帯を利用する。このため住友電工は,スペインやイタリアなど欧州を中心に夏から販売を始める。欧米では1.7M~30MHzという高い周波数帯も,電力線通信に開放済み,または開放を検討している国が多い。