パシフィコ横浜で2月27日から3月1日までの3日間開催されている展示会「Bluetooth & PAN」(「IP.net JAPAN 2002」と併設)で,メーカー各社は短距離無線技術のBluetoothを具体的な用途に応用したシステムの展示やデモを一斉に出展した。中でも目立ったのはオムロン。同社は,Bluetoothを利用した通信装置と電子チケット利用時の自動改札システムを開発し,そのデモを実施した。2段階の認証を組み合わせるなど,かなり実用化に近いと見られるシステムだ。

 オムロンが開発したのは,Bluetoothの仕様1.1版に対応した無線通信装置「BTA-Twin」と,PDA(携帯情報端末)に搭載するチケット認証用のアプリケーション,同アプリケーションと連携して動作する自動改札システムなど。展示会では,PDA中の電子チケットを持つ人が改札に近づくと,自動的にゲートが開く様子をデモンストレーションした(写真)。

 BTA-Twinは指向性と無指向性の2種類のアンテナを内蔵し,それぞれが異なる場所をカバーする機能を持つ。無指向性のアンテナを使う無線が,改札の半径数メートルに近づいた人の電子チケットを認証。一方,指向性アンテナは,チケット・ホルダーが実際に改札を通る際に個人を認証する。名前のTwin(双子)はアンテナが二種類あることを指す。

 認証を2段階に分けたことについてオムロンは,「チケットの認証にはどうしても数秒かかるが,エリアを広く設定できる無指向性の電波を使うことで,改札のゲートを通る前にチケットの有無を確認しておける。ただ,実際に人を改札に通すかどうかの段階では,隣の改札を通る人を誤認しないように,エリアの場所を細かく特定する必要がある」(技術開発センタIT応用開発部開発1課の稲葉哲男主事)と説明する。今回展示したシステムは,チケットの改札のほかに,銀行などのATM(自動現金預払機)などでも応用できるという。

 BTA-Twinは,Bluetoothのほかに,IEEE802.11bの無線LAN機能も搭載している。今回Bluetoothを使った理由は,「無指向性アンテナを使う無線には,無線LANも使える。ただし,非常に狭い場所を特定するにはBluetoothでないとダメ」(稲葉氏)。通信距離が狭く,特定の場所や人の認証に向くというBluetoothの特性をうまく応用したと言えるだろう。

 オムロンのほかには,音響機器のケンウッドが,カー・ステレオにBluetoothを組み込んだ車を展示。音楽ファイルを数多く保存したPDAやノート・パソコンに無線で接続し,カー・ステレオで音楽を聴けるというコンセプトを公開した。また,マクニカは特定の店の前に来たときに,その店の情報をプッシュ機能でPDAに表示するシステムのデモを公開した。

 以前のBluetoothのデモでは,アクセス・ポイントなど無線LANに対抗するような機器の展示が目立った。しかし,最近Bluetoothは,無線LANの標準規格IEEE802.11bに準拠した製品の勢いに押されがち。その中で,各社はBluetoothの特徴を生かした使い方をアピールする姿勢を強めているようだ。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)