NPO(特定非営利活動法人)や産学の法人および個人で構成するグループ「みあこネットプロジェクト」は2月18日,無線機器メーカーのルートなどと共同で京都府下でIPv6を使った無線インターネット接続の実証実験を開始したことを明らかにした。実験期間は3月末までを予定。現時点で京都市を中心に,約70カ所に基地局を設置。最終的には100カ所以上にするというもので,IPv6の利用例としては日本では最大規模の実験となる。

 みあこネットプロジェクトは,NPOの日本サスティナブル・コミュニティ・センター(SCCJ)が運営主体となるグループ。京都大学,京都高度技術研究所,三菱マテリアルなどが参加しているほか,個人でも参加できる。今回の実験は,通信・放送機構(TAO)のIPv6に関する委託研究開発事業に基づくもので,ルートや,無線インターネット・サービス「街角無線インターネット」実験を各地で実施中のモバイルインターネットサービス(MIS)なども協力している。

 実験は,ルートが提供するIPv6対応のIEEE802.11b無線ルーターを基地局として利用し,IPv6搭載の無線端末からインターネットへ無線で接続できるようにするもの。現時点でJR京都駅周辺のほか,四条から五条にかけた鴨川西岸,京都大学,龍谷大学,国立京都国際会館,京都リサーチパーク付近など京都府下に70カ所に基地局を設置済み。最終的には100カ所に増やす予定である。ルートの機器は,「モバイルIP」の仕様をベースとするハンドオーバー機能を持つ。このため,特定の狭いエリアだけで利用できるホットスポット・サービスとは異なり,ユーザーが移動しながら通信を継続できるのが特徴だ。

 IPv6の利用が実験の目的だが,無線ルーターはIPv4とIPv6のデュアル・スタックを搭載する。このため,IPv4でも利用は可能だ。ただ,ハンドオーバーの実現のためには,ルートとMISが開発したモバイルIP用のソフトウエアを利用する必要がある。このソフトウエアは,現時点ではIPv6/IPv4のデュアル・スタックを搭載したUNIX互換のOS「FreeBSD」だけに対応している。ただし,「近いうちにWindows XPにも対応する予定」(ルート)だという。

 基地局の設置および運用は一種のフランチャイズ方式を採用した。つまり,同プロジェクトが基地局のオーナーを公募。募集に応じたオーナーが,基地局の設置場所とアクセス回線の導入費用および月額利用料を自費で負担する形である。ただし,無線ルーターやアンテナなどAPの機器代と設置工事費は,TAOの委託研究開発事業に基づく予算で賄う。無線端末側のモニターも近く募集を始める。

 無線LAN技術を利用する無線アクセス・サービスは,大手通信事業者の寡占となっている携帯電話事業と違い,今回のような草の根的な非営利組織が無視できない役割を果たす可能性がある。特に今回の実験は規模が大きいため,IPv6のモバイル利用の成否のほか,無線アクセス・サービスを計画しているほかの通信事業者との電波上のすみ分けなどにも影響を与えそうだ。