5GHz帯無線アクセスの屋外利用を実現するため,総務省が電波の周波数帯割り当ての再検討に乗り出した。総務省の情報通信審議会は10月22日,「5GHz帯無線アクセスシステムの技術的条件」について諮問。5GHz帯無線アクセス・システム用に使える周波数帯の利用条件を調べ,2002年3月に答申を受けることを予定している。

 総務省が5GHz帯無線アクセスの屋外利用を検討するのは,2000年3月に続いてこれが2度目。1度目は,5.25G~5.35GHz(5.3GHz帯)の間の周波数の利用を想定していたが,「アメダス」などに使われている気象レーダーや人工衛星などとの共用条件が厳しく,電波の開放を断念した経緯がある。

 今回再検討するのは,4.9G~5.0GHz(4.9GHz帯)の100MHz分。4.9GHz帯は現在,「固定マイクロ波伝送」として通信事業者の中継業務などに使われている。非常に弱い電波を受信する必要がある気象レーダーや人工衛星との共用に比べれば,今回の条件は比較的緩やかで,電波が無線アクセスに開放される可能性は高い。

 5GHz帯無線システムとしては,日本国内ではソニーが11月3日に無線LAN製品を発売予定。また,2002年春にはNTT東日本なども5GHz無線LAN製品を発売する。これらの製品は5.15G~5.25GHz(5.2GHz帯)を利用する仕様となっているため,現状のままでは今回検討を始める4.9GHz帯を利用することはできない。ただし,5GHz無線LAN製品のメーカーはいずれも「周波数上の対応は技術的には容易」としている。

 電波開放の方向で答申されれば,2002年の秋には5GHz帯無線を使った数十メガ・ビット/秒のホットスポット・サービスやインターネット接続サービスが可能になる。FTTH(fiber to the home)に通信速度で対抗し得るブロードバンド・アクセス回線の有力な選択肢が生まれそうだ。
(野沢 哲生=日経コミュニケーション)