総務省は,2.4GHz帯を使用する無線システムについての技術的条件を緩和する。これにより,現在標準化が進められている2.4GHz帯で20Mビット/秒以上の伝送速度を実現する無線LAN規格の利用や,無線通信の到達距離を最大3倍に延長することが可能になる。

 今回の無線システムの条件緩和は,総務省が3月に情報通信審議会に諮問していた「2.4GHz帯を使用する無線システムの高度化に必要な技術的条件」について答申を受けたことによる。答申の内容は大きく,(1)2.4GHz帯を使う無線システムについて,変調方式のOFDM(直交周波数分割多重)方式を利用できるようにする,(2)一定の条件の下で強い指向性を持ったアンテナを利用できるようにする,(3)動くものを無線を使って識別する技術である「移動体識別」にディジタル変調方式の一種である周波数ホッピングを利用できるようにする――の3項目からなる。

 (1)のOFDMは,「マルチパス」という反射波による混信に強い耐性を持つのが特徴の変調方式。2003年に開始予定の地上波ディジタル放送や,5GHz帯の高速無線LANの標準仕様で採用されている。2.4GHz帯無線LANでも,「IEEE802.11g」として標準化が進行中。IEEE802.11gで候補になっている仕様では,最大伝送速度として59Mビット/秒を規定しており,IEEE802.11gの仕様に準拠する製品が出てくれば,数十メガ・ビットの大容量通信が2.4GHz帯無線LANでも実現する。製品は早ければ,2002年後半に登場する見込みだ。

 (2)のアンテナの特性に関する条件緩和では,主にポイント・ツー・ポイント通信でより遠い地点との通信が可能になる。到達距離はこれまでの最大3倍。数十キロ離れた2点間の通信や,離島との通信が以前よりもやりやすくなる。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)