英ボーダフォンは9月17日,日本テレコムの株式のTOB(公開買い付け)を実施するために,日本テレコムおよびJR東日本と協議を進めていることを明らかにした。日本テレコムの取締役会から賛同を得た場合,最大21.7%の友好的TOBを開始する可能性があるという。

 ボーダフォンは,日本テレコムの株式を45%所有する筆頭株主。これに次ぐのがJR東日本の15.2%である。TOBが実現すれば,ボーダフォンは日本テレコム株を3分の2以上取得。ほぼ完全に,日本テレコムの経営権を掌握することになる。株主総会で,会社経営を左右する重大な案件への拒否権を発動するには,3分の1以上の株式を所有している必要があるからだ。

 ボーダフォンがTOBの実現を目指す一番の狙いは,日本テレコムの子会社であるJ-フォンの携帯電話事業で主導権を得ることだ。ボーダフォンは英国で携帯電話サービスを提供しているうえ,約30カ国の携帯電話事業者に出資している。このうち,半数の事業者でボーダフォンの出資比率は50%を超す。グループ各社でサービスや端末などを共通化していくことで,国際競争力の強化を図る。

 TOB(takeover bid)とは,株券の買い付けや売り付けを募集する公告を一般株主などを対象に実施し,証券市場を介さずに株券を買い付る行為。日本では,あらかじめ当事者となる企業間で合意してからTOBを宣言することが多い。海外では,一方的に買収を仕掛ける敵対的TOBも少なくない。