DDIポケットは8月10日,PHSサービス向けに構築したIPパケット通信網を大企業など大口ユーザーに貸し出すサービス「無線IP接続サービス」を9月中をめどに開始すると発表した。

 同サービスは,企業が単独で使うより,第三者が任意の通信料金でPHSによる最大32kビット/秒のIPパケット通信サービスを提供するのに適する。加入電話や専用線など固定通信サービスで見られる再販サービスの移動通信版の登場を促すことになりそうだ。

 すでに,無線IP接続サービスを利用した企業向けの独自PHSサービスの提供準備を進めているところもある。各種モバイル・ソリューション・サービスを手がける日本通信だ。同社は8月中にも,新サービスの内容を発表する予定。また,DDIポケットは日本通信以外にも何社かと協議を進めており,年内に数社が無線IP接続サービスを利用し始める見込みである。

 無線IP接続サービスは,DDIポケットがPHSパケット通信網内にエッジ・ルーターを設置し,ルーター経由で企業LANなどに接続することを前提としたサービス。利用料は,(1)ルーターを含むDDIポケット・ネットワークの使用料,(2)PHS端末の接続料,(3)PHS端末に動的に割り振るIPアドレスの利用料,(4)PHS端末からの通信先を指定するための電話番号利用料--に大別できる。

 (1)のネットワーク使用料は,エッジ・ルーターで設定する通信速度で決まる。通信速度が8Mビット/秒までなら月額3000万円。8Mビット/秒超30Mビット/秒以下なら,月額3000万円に加えて1Mビット/秒ごとに320万円がかかる。30Mビット/秒を超える場合,さらに1Mビット/秒ごとに300万円が加算される。

 (2)の端末接続料は,1端末ごとに月額80円。これ以外の通信料などは発生しない。

 (3)のIPアドレス利用料は,29個までは無料。30個以上になると追加29IPアドレスごとに月額3000円かかる。

 (4)の電話番号利用料は,1番号なら月額1万5000円で,2~3番号なら月額3万円。4番号以上の場合は,1番号および2~3番号の利用料を組み合わせた金額になる。

 DDIポケット自身は8月29日から,最大32kビット/秒のIPパケット通信サービス「AirH" 32kパケット方式」を月額5800円の定額料金で提供する。一方,日本通信は,無線IP接続サービスをIP-VPNのように使うことで,複数の企業ユーザーを対象としたPHSを使うパケット通信サービスを実現する。同社は,AirH"とは異なる料金体系にする意向だ。

 無線IP接続サービスは,PHSのパケット通信に特化したサービスで,通話用途には使えない。また,同サービスは,通常のDDIポケット・ブランドのPHS端末は利用できないという条件で提供される。このため,日本通信がPHSベンダーに依頼し,自社ブランドの32kパケット通信対応PHSを製造してもらいユーザーに提供する。

(杉山 泰一=日経コミュニケーション)