NTT-MEは7月30日,ADSL(asymmetric digital subscriber line)回線を利用したIP電話サービス「WAKWAKコール・ゴーゴー」を9月に開始すると発表した。音声をIPで伝送するVoIP(voice over IP)技術を利用する。同社のインターネット接続サービス「WAKWAKざんまいADSL」と「エンタープライズADSL」ユーザー向けに提供する。

 WAKWAKコール・ゴーゴーは,ユーザー宅にルーターと「VoIP TA」と呼ばれるゲートウエイを設置し,VoIP TAに一般の電話機を接続して利用するサービス。このVoIP TAは加入電話用のジャックを2ポート備え,スプリッタで分岐した加入電話用の信号も収容する。こうすることで,1台の電話機から,VoIPを使うADSL経由の通話と加入電話経由の通話の両方が可能になる。

 特徴は,ユーザー同士の通話が定額料金で利用できること。料金は検討中だが,WAKWAKざんまいADSLでは月額500~1000円程度,エンタープライズADSLでは同2000円程度を予定する。外線発信も可能だが,国内通話の場合で90秒ごとに10円程度を課金する予定。着信は加入電話網経由となる。

 音声符号化方式は8k~64kビット/秒の間で検討中。NTT-MEのADSLサービスはアクセス回線にNTT東西地域会社の「フレッツ・ADSL」を利用する。フレッツの地域IP網とNTT-MEのIP網という複数の網を経由するため,音声品質の確保は難しそうだが,「複数のテストを実施しているが,回線交換方式とほとんど変わらない音質を確保できている」(NTT-MEの桑原英治担当部長)という。

 注意したいのは,VoIP TAとルーターをユーザーが購入する必要がある点。販売価格は5万円程度となる見込み。機器コストも考慮すると,企業ユーザーのようにある程度まとまった量の通話をしないとコスト・メリットはなさそうだ。

 NTT-MEはこれまで,大企業の内線電話向けのサービスである「XePhionボイスダイレクト」と個人向けのIP中継電話サービス「Love ME Call」(8月1日に「WAKWAKコール」に改称予定)の2種類のIP電話サービスを提供していた。WAKWAKコール・ゴーゴーは両者の中間的位置づけ。「当面は中小企業が主要なターゲット。宅内機器の価格が下がれば個人ユーザーにも積極的に売り込む」(桑原担当部長)意向である。

(島津 忠承=日経コミュニケーション)